2021.09.29

集塵機選定のための基礎知識2~レーザークリーン集塵機~

「集塵機選定のための基礎知識1」では、一般的な風量型集塵機と高圧型集塵機について説明しましたが、チコーエアーテックの製品ラインアップには、特定用途の集塵機としてレーザークリーン集塵機があります。レーザークリーン集塵機は、レーザーを使用したマーキングや溶接、切断・穴あけ加工といった工程(レーザー工程)向けの集塵機です。本稿では、レーザー工程における集塵機の必要性とレーザークリーン集塵機の特長を説明します。

レーザー工程で集塵機は必要か

レーザー工程では、対象物にレーザー光を照射して加熱し、融解・蒸発させることでマーキングや加工を行います。その際、「ヒューム」とよばれる煙のような粉塵が発生します。

ヒュームの対策をしなければ、製品の品質や歩留まり率の低下につながります。ヒュームがワークに付着することによる弊害だけでなく、レーザー加工機のレンズにヒュームが付着すると、焦点ずれや印字の位置ずれ等を発生し、さらにレーザー加工機の故障にもつながります。また、レーザー工程で発生するヒュームには、独特な臭気も含まれるため、作業環境を悪化させてしまいます。このようなことから、レーザー工程において集塵機の必要性が高まっています。

ヒュームの性質

ヒュームとは、金属や樹脂等の蒸気が凝集して微細な粒子になったものをいいます。レーザー工程で発生する他、はんだ付け等の工程でも発生します。ヒュームは、発生源となる物質によって性質が異なり、粘着性の低い「さらさらヒューム」と粘着性の高い「ねばねばヒューム」に大きく分類できます。

さらさらヒュームは、ガラスやアクリルなどの材料にレーザーマーキングやレーザー加工をしたときに発生します。一方、ねばねばヒュームは、フィルム系材料の他、ヤニや接着剤を含んだ合板、合成樹脂などの材料にレーザー加工を施すときに発生します。はんだ付けの際に発生するヒュームもこれに該当します。

他に、金属材料から発生するヒュームは粒子が非常に微細で、フィルタ内部に入り込むため注意が必要です。

ヒューム集塵の問題点

ヒューム、特にねばねばヒュームを通常の集塵フィルタで吸引すると、ヒュームが冷えて固まる際に、フィルタ表面で固着してしまいます。これが目詰まりの原因となり、フィルタ交換頻度が急激に高まってしまいます。また、ヒュームに含まれる臭気については、通常の集塵フィルタでは消臭効果はありません。レーザー工程向けの集塵機は、このような問題をヒューム特有の問題を解決できる必要があります。

blog3_fig1_1 blog3_fig1_2 blog3_fig1_3

フィルタはフィルタ繊維とコーティングで構成されています。

粉塵の粒子がフィルタに衝突すると捕集され付着します。

粉塵がフィルタに付着堆積すると吸引力が低下し、フィルタ交換が必要になります。

図1 ヒュームによるフィルタの目詰まり

レーザークリーン集塵機の特長

チコーエアーテックのレーザークリーン集塵機は、フィルタの目詰まりや臭気といったヒューム特有の問題を、ゼオライトと活性炭を使って対策しています。

ゼオライトの役割

ゼオライトとは、多孔質アルミノケイ酸塩の総称で、沸石とも呼ばれます。ゼオライト結晶中の細孔は、ヒュームを吸着できるため、レーザークリーン集塵機では、フィルタのプリコートとしてゼオライトを使用しています。

blog3_fig2_1 blog3_fig2_2 blog3_fig2_3

ゼオライトを巻き上げてフィルタに付着させます。

フィルタのプリコートとして、粉塵がフィルタ繊維に付着するのを防ぎます。

フィルタに振動を与えて、ゼオライトごと払い落とし、フィルタ性能が回復します。

図2 ゼオライトによるフィルタ保護

活性炭の役割

活性炭とは、炭素を主成分とする多孔質物質で、ヤシ殻や石炭などが原料です。多孔質で広い表面積を持ち、物質を吸着する性質があります。レーザークリーン集塵機では、ヒュームに含まれる臭気や有害物質の対策として使用しています。

CHIKOレーザークリーンシリーズの紹介

ここまで、レーザークリーン集塵機の必要性と特長について説明しましたが、ヒューム集塵に必要な性能は、作業内容や稼働時間、ヒュームの種類によって異なります。チコーエアーテックでは、必要な性能に合わせて、ゼオライトの有無やフィルタの容量、粉塵の払落し方法等を変えることで、幅広いラインアップを揃えています。

レーザーマーキング用集塵機

粘着性の高いヒュームの集塵に適しています。1次フィルタに添加されたゼオライトでフィルタ表面をプリコートします。機械振動による払い落とし機能を搭載しており、フィルタ性能を維持することができます。

機械振動払落し図3:機械振動払落し

フィルタ表面に機械振動を与えることで、フィルタの付着物を払い落とす機能です。あらかじめ設定した積算稼働時間が経過すると、運転停止した際に、自動的に塵落とし機能が働きます。必要な場合は手動で行うことも可能ですが、運転を停止する必要があります。

レーザーマーキング用集塵機 CBA-1000AT3-HC-DSA-V1CBA-1000AT3-HC-DSA-V1

CBA-1500AT3-HC-DSA-V1CBA-1500AT3-HC-DSA-V1

レーザーマーキング用集塵機(簡易型)

簡易型のレーザーマーキング用集塵機です。ゼオライトによるフィルタのプリコートを省略し、ガラスや金属等、粘着性の低いヒュームの集塵に適しています。

レーザーマーキング用集塵機(簡易型) CKU-060AT3-ACCCKU-060AT3-ACC

レーザー加工用集塵機

レーザーによる切削加工等、大量のヒュームが発生する工程に適した集塵機です。フィルタ濾過面積、ゼオライト量が多く、チコーエアーテックのレーザークリーンシリーズの中で、最も処理能力の高い製品群です。対象物は樹脂でも金属でも対応可能です。1次フィルタ室に添加されたゼオライトがフィルタ表面をプリコートし、ヒュームを吸着したゼオライトをパルスエアーの力で払い落とします。稼働中に塵落としを行うため、長時間の連続運転が可能です。

パルスエアー式自動払落し図4:パルスエアー式自動払落し

あらかじめ設定したパルスタイマーの周期により、パルスエアー(圧縮空気)で粉塵を払い落とす機能です。目詰まりを感知し、風量不足時にも塵落とし機能が働きます。稼働中にパルスエアーにて払い落とすため、運転を停止することなく定期的に塵落とし機能が働きます。

レーザー加工用集塵機 CHP-1200AT3-ACCCHP-1200AT3-ACC

CHP-1600AT3CHP-1600AT3

まとめ

レーザークリーン集塵機の使用例

チコーエアーテックのレーザークリーン集塵機は、実際に様々な場面で使用されています。本稿で紹介できなかった使用例については資料にまとめましたので、是非ご活用ください。
その問題、集塵機で解決できます!(レーザー工程編)